林 謙一郎 (Ken-ichiro Hayashi) English version
岡山理科大学 理学部 生物化学科 教授 博士(農学)
1968年生まれ 出身地 大阪
講義科目 生物有機化学、生物化学I、生理活性物質概論(大学院)、生物化学実験4
連絡先
郵便番号700-0005 岡山市北区理大町1-1 e-mail: hayashiアットdbc.ous.ac.jp アットに@を入れてください。
専門 生物有機化学・天然物化学
最近の研究論文は、こちらに
研究テーマ
オーキシンの信号伝達系に作用するバイオプローブの探索
植物生理学に有用なバイオプローブの開発
南米産薬用植物の成分研究
植物の生長や分化は、外的要因とともにオーキシン、サイトカイニン、アブシジン酸、エチレン、ジベレリンなどの
植物ホルモンにより制御されています。その中でもオーキシンは最も古くから知られており、多彩な生理作用を
示すことが知られています。しかしながら、分子レベルでの作用機構、すなわちオーキシンの信号伝達系につい
ては不明な点が多くあります。その信号伝達系の解明には、特異的に作用する阻害剤が有用です。このことから、
放線菌の二次代謝産物中にオーキシンの信号伝達系に対する阻害剤のスクリーニングを行い、阻害物質の精製、
構造決定を行い、オーキシンに対する生理活性についても検討しています。
生命現象の解明には、いろいろな研究アプローチがありますが、最近、Chemical Biology という学際領域が活発に
なってきており、この分野で、相次いで学術誌が創刊されています。このChemical Biologyとは、化学的な手法で、
生命現象の解明にアプローチをしようという動きです。今までに、医薬の開発を目的として、さまざまな、受容体拮抗
剤や酵素阻害剤 (バイオプローブ)が開発され、それらを利用して、新たな生命現象の解明が行われてきた。しかし
ながら、あくまで、医薬としての開発が主流であったため、植物へのこれらバイオプローブの利用は、哺乳類に対して
開発されたバイオプローブが用いられ、はじめから、植物に対するバイオプローブとして開発されたものは、限られ
ていました。そこで、植物に対する”専用”のバイオプローブを開発しようとする研究が注目を浴びています。
”オーキシンの信号伝達系に作用するバイオプローブの探索”は、この植物に対する”専用”のバイオプローブの
探索で、世界的に見て、初めての研究で、Plant Physiology誌の総説にも紹介されています。
Indole-3-acetic acid (Natural Auxin)
われわれは、バイオアッセイに形質転換シロイヌナズナを用いています。阻害剤の探索から、全合成、
構造活性相関、その他、シロイヌナズナの変異株や形質転換体をもちいて、作用機構の
解明まで、有機化学から分子生物学まで、幅広い分野をカバーしています。
現在までに、見出したオーキシンの信号伝達系の阻害剤には、Yokonolide B と Terfestatin A があります。これらの
阻害剤はオーキシンの作用機構の研究や、植物生理学上、非常に有用なバイオプローブとして評価されています。
たとえば、yokonolideの研究は、世界中の第一線の研究者が論文の評価を行っているFaculty of 1000の論文評価で、
Must Read F1000 factor 4.8の評価を受けています。また、Terfestatin Aの論文は、Plant Physiology誌のOn the insideで
取り上げられました。
最近では、植物の遺伝子発現を調節する物質としてCaged gene inducerを開発しており、このCaged gene inducerも
Must Read F1000 factor 4.8 の高い評価を受けています。
また、2008年に、オーキシン受容体TIR1に特異的に作用するアンチオーキシンプローブを開発し、PNAS誌 に発表しました。
論文の中では、ワシントン大学のN.Zheng博士らと共同研究を行い、このアンチオーキシンプローブについて、TIR1とプローブ複合体
の結晶構造を解析し、その作用機構についても、分子レベルで明らかとしております。
また、最近、ChemBioChemに掲載されたCaged auxinの論文が、Cover Pictureに採用されました。
caged auxinの論文は、Nature Chemical BiologyのResearch Highlightでも紹介されています。(2009年9月号)
Cover Picture
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Nature Chemical Biology Vol 5 (9), 615 (2009)
PNAS
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アンチオーキシンプローブ-TIR1複合体の結晶構造
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アンチオーキシンプローブのTIR1への結合様式
アンチオーキシンプローブ処理で、シロイヌナズナは、オーキシン信号伝達系
変異株と同様な表現型を示す。
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たとえば、Yokonolide B (YkB)でシロイヌナズナを処理すると、オーキシン耐性変異株のような表現形を示します。