研究室紹介

生物分子化学研究室

林 謙一郎、福井 康佑

Chemical Biologyとは、化学的な手法、すなわち受容体拮抗剤や酵素阻害剤(バイオプローブ)を利用して、新たな生命現象の解明に取り組む学問領域です。これまで植物に対するバイオプローブとして開発されたものは、限られていました。そこで植物に対する”専用”のバイオプローブを開発しようとする研究が注目を浴びています。私たちの研究室では、この植物に対する”専用”のバイオプローブを探索・活用し,植物ホルモンが関わる植物の成長調節の仕組みを解き明かすことを目標としています。特に植物ホルモンのケミカルバイオロジーについては,学術的に価値の高い、世界でも最先端の研究を目指しています。

応用微生物学研究室

三井 亮司

近年、様々な環境に適応して微生物間で菌叢と呼ばれるコミュニティを形成していることが明らかになってきました。私たちは微生物が環境を認識して適応するメカニズムを分子レベルで解明する研究を行っています。現在は植物、またはその周辺でコミュニティを形成し、共存・共生することで、植物の生長を促す微生物について研究を行っています。土壌、根圏や葉上などには様々な微生物が存在しており、植物を病原菌から守ったり、光合成の酸化ストレスを軽減させたりする機能を持つものもあります。このメカニズムの解明は農作物の効率的な生産などによる世界規模の食糧問題への解決に繫がる可能性もあると考えています。

天然物合成化学研究室

大平 進、窪木 厚人

生理活性物質およびその類縁体を可能とする新しい合成手法の開発を行っています。具体的には、アルキリデンカルベンの1,5-C,H挿入反応を利用した不斉四級炭素を含む化合物、反応性の高いオルトキノンを利用した生理活性物質に多く含まれる芳香族化合物、生理活性の発現に重要な糖類の合成などです。いずれも独自に開発した反応を鍵段階としています。その他、速度論的光学分割などの酵素反応を組み込んだ有用物質の合成も研究対象としています。そして、これらの研究を新しい農薬や医薬を開発するためのきっかけとすることを目指しています。
また、企業との共同研究において、防錆剤の成分や歯科用接着材として用いることができる機能性モノマーを開発しました。

分子遺伝学研究室

池田 正五、河野 真二

真核生物の核の中にはDNAが存在し、生命の設計図として働いています。私たちの研究室では、DNAの遺伝情報維持や機能発現について次のような研究を行っています。(1)DNAは紫外線や放射線、発がん化合物、さらには私たちが吸っている酸素からできる活性酸素によって傷つきます。生物はこの傷を修復しているのですが、その能力以上に傷つくと、アポトーシスという細胞死や突然変異を起こします。ヒトだと、遺伝病や生活習慣病、がん、老化の原因となります。そこで、私たちは、傷ついたDNAの修復の仕組みを調べています。(2)真核生物のDNAはクロマチンとよばれる構造を形成して細胞核の中に収納されており、転写や複製、修復などの代謝反応に応じて、クロマチンの構造が変化することが知られています。私たちは、このクロマチン構造の変化に関わる因子の分子メカニズムについて調べています。

生物無機・植物生理研究室

尾堂 順一、猪口 雅彦

酵素様活性,DNA切断活性,あるいは光抗菌活性など様々な機能を示す金属錯体の開発・応用研究を行っている。これらの活性は,それぞれ医学・薬学分野に利用できる人工酵素,抗腫瘍薬,抗菌剤の新規開発につながる。また,高等植物の形態形成や環境応答反応,有用物質生産などを調節するメカニズムや,それらの生理機能の応用について,植物組織培養や遺伝子組換えなどの植物バイオ技術を利用して研究を行なっている。

環境生物化学研究室

汪 達紘、宮永 政光

環境生物化学研究室では、フィールドとラボでの研究を通して、環境物質が生体に対して有益な働きをするのか有害な影響を及ぼすのか、分子レベルから人間集団まで研究を行っています。
また、有機汚染が著しい児島湖などを調査して汚染の理由を探り、対策を検討しています。
主な研究テーマ
1) 森林環境における健康増進効果の検証
2) POPs(残留性有機汚染物質)や重金属などの生物蓄積性・生体影響評価
3) 児島湖汚染の実態調査および水域における環境変異原の動態解析

細胞生化学研究室

南 善子、森田 理日斗

私たちは、ある種のタンパク質が生体内でどのように働いているかということに興味をもって研究を行っている。それらの生化学的特性、代謝における役割および調節機構を,生化学的・分子生物学的技術によって解明を進めている。 青色染料の原材料として栽培される”藍植物”と原生生物の一種である”真正粘菌”を,主な実験材料として用いる。
主な研究テーマ;
タデ科植物アイの二次代謝産物インジカンの合成・貯蔵とその代謝調節の研究 真正粘菌の乾燥耐性機構の解明

講義

生理活性物質特論

生命現象を化学的な視点から理解することで、生命活動・現象を分子レベルで包括・系統的に理解することが可能となる。生物化学・遺伝学・分子生物学・細胞生物学などの生物学を基礎として、生命現象の制御・調節機構に関わる化合物(生理活性化合物)の構造と作用機構を解説する。また医薬品や農薬などの生理活性化合物の最新の実験手法や設計理論を紹介する。

微生物機能学特論

微生物は多様な環境で生存するためにユニークな機能を身につけたものが多く見られる。これらの機能を食品・医薬・産業などに利用するには、その機能を分子レベルで理解することが必要である。近年の解析技術の進歩により、多くの微生物ゲノムが解読され、新たな知見が得られている。本講義では微生物の代謝およびそれに関わる酵素等の解析、ゲノムの解析法、また、応用を目的とした微生物育種法などについても解説する。

分子遺伝学特論

遺伝情報を担うDNA分子は内的・外的要因により絶えず損傷を受けている。DNAの損傷は生物の突然変異を起こし、さらに大きな損傷は致死的である。ヒトでは老化やがんの原因となる。しかし、すべての生物にはDNA損傷を修復する機構が備わっており、ゲノムが正確に保たれている。本講義では、DNA損傷の化学と生物学的影響、およびDNA修復の分子機構を理解する。さらに遺伝子の変異に起因するヒトの病気の成り立ちについて習得する。

分子生物学特論

本講義では,分子生物学の分野に関連した最新の研究を紹介する。受講者は,いくつかの研究論文を輪読し,その内容を発表する。講義の目的は,この分野での最新の研究とそのテクニックの理解により,考える力を身につけることである。

環境生物化学特論

日常生活で出会う物質が、環境の中でそして生体の中でどのような動的挙動をとるか、人の健康や生態系へどのような影響を及ぼすか、環境問題を引き起こす代表的な物質及び環境負荷物質を生物の機能を利用して安全なものに変換したり、除去する方法などについて学ぶ。このコースでは、環境物質による健康影響の生物化学的側面の講義、関連論文の批判的吟味、および議論が含まれます。

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